だらだらブログ

なんかゴミです。

だらだらマスターズ vol.1 -赤単クレイジーバルチュリス-

 デッキを作ることは、想像力を拡張する行いだ。

 使いたいカードやコンセプトを決め、それに沿ったカードを選別する。課題を発見し、細部を調整する。そして実際に回してみて、得られた不足を改善点として次の調整に生かしていく。

 仮説と検証。そうした営みは思考の飛躍をむしろ是とする。だがどんな飛躍も、検証がなされないならただのフラッシュアイデアに過ぎない。ゆえにデッキ構築とは、己が想像力の限界に挑んでは自らの論理的思考で反駁することによってアウトプットの精度を高めてゆく、苦しくも楽しい知的営為なのである。

 そしてそれは、対戦者が自らデッキを組んで他のプレイヤーと戦うカードゲームである限り、基本的に変わることはない。

 そう、つまり。

 マジック:ザ・ギャザリング」(マジック) であろうと「デュエル・マスターズ」(デュエマ) であろうと、私がデッキを作り続けることにもやはり変わりはない、ということだ。

 さて自己紹介が遅れたが、私は「まつがん」。かつて晴れる屋に勤め、編集者兼ライターとしてマジックの様々な記事を執筆していたが、2018年3月末をもって退職し、縁あってフリーでデュエマに関わるお仕事をさせていただくこととなった。

 だが実際のところ、現在の私はデュエマについてはまだまだ門外漢であると言わざるをえない。年が明けてから色々なウェブサイトやYouTubeの動画で対戦風景を見るなどして勉強をしてきてはいるものの、16年もの歴史があるカードゲームをたったの3か月かそこらで理解したというのはあまりにも浅はかだろう。事実、デュエマのプレイヤーにとってどんなに有名なカードであっても、私にとっては大雑把な能力ですらまだ覚束ないものが多いといった有様である。

 ゆえにこのシリーズ「だらだらマスターズ」は、マジックの世界から移ってきた私自身のデュエマの勉強も兼ねているというのが正直なところではある。なのでデュエマ界において常識知らずとされる物言いや的外れな構築・カード評も多々出てくるかもしれないが、私がデュエマに慣れるまではある程度ご容赦いただけると幸いだ。

 ともあれそれでは早速、デュエマでのデッキ構築に挑戦してみるとしよう。

■ 1. 基本

 マジックのプレイヤーにとってデュエマのルールを理解すること自体は、実はそう難しいことではない。

 初期手札は5枚、すべてのカードは手札からいわゆる"土地"として1ターンに1回だけ置ける代わりにマリガンはなし。勝利条件はゲーム開始時に裏向きで設置する5枚の"シールド"をすべて割った上でプレイヤーにダイレクトアタックすること。そして基本的にすべてのクリーチャーはパワーに関わらず1回のアタックにつき1枚のシールドを割ることができる (シールドは割られると持ち主の手札に入る。また逆にクリーチャーがそれぞれ持っているパワーの値はクリーチャー同士の戦闘時などでしか参照しない) 。原則としてブロックはできないが、相手のタップしているクリーチャーに対して攻撃することは可能。ドローは1ターンに1枚 (先攻1ターン目はドローなし)、いわゆる"召喚酔い"もある。

 マジックを嗜んだプレイヤーならこれだけ聞けば、デッキを渡されればあとは何となく対戦の真似事をすることが可能だろう (ちなみに初見で最も理解ができなかったルールは"超次元ゾーン"で、最も「この能力頭おかしいな?」と思ったのは"革命チェンジ"なのだが、これはひとまず措くとして)。

 だが、ことデッキ構築となると、話はそう単純ではない。特にデュエマの場合は一部の禁止・制限カード以外はすべてのカードが使用可能な"殿堂フォーマット"が主流のため、環境で活躍しているデッキたちはどれも既に安定性・ぶん回りともに桁外れのデッキパワーを持ってしまっている。そんな中において第一線で通用するようなデッキを始めたばかりの私がいきなり作り上げるのはさすがに至難の業だ。なのでまず始めはごくシンプルに、「トーナメントで通用すること」は課題として設定はせずに、ひとまず「デッキとして成立していること」を最低限の目標に掲げることにする。

 さてそうした前提を踏まえ、私はどんなデッキを組むべきだろうか?

 一つ言えることは、まずはデュエマの基本を押さえる必要があるということだ。

 デュエマの基本とはつまり、マナをチャージする感覚、シールドをブレイクする感覚といったように、ゲーム中の基本行動に対するバランス感覚のことである。こうした基本を押さえないと、そもそもデッキ構築に必要となる様々な前提を欠いたままとなってしまう。

 だから最初に作るデッキはそうした"基本"を学ぶことができるデッキでなければならない。ならば対応は不要であり、できることもただ一つで構わない。

 ただ一つ。そう。

 "最速"ありさえすれば、他は何も求めないということだ。

■ 2. 最速

 ビートダウンは、環境を定義する。

 相手の妨害を顧みない高速の攻め手は、逆にどのような受け札、どのようなトリガーならば攻め手への対応が可能となるのかという環境の輪郭を露わにする。ゆえに環境を知るためには、"最速"を知る必要がある。

 ならば、"1マナ→1マナ+1マナ"の動きをまずは求めてみるべきだろう。

 そう思い、デュエマにおける1マナクリーチャーを検索したとき、驚くべき事実に気がついた。

 デュエマには16年の歴史がありながら、1マナでシールドを割れるクリーチャーはかなり少ないのだ。

 だが、冷静に考えてみれば当然だ。勝利条件は5枚のシールドをブレイクしてからのダイレクトアタックということで、都合6度のアタック。しかもクリーチャーによるブロックは原則できない。そんなシステムで"1マナ→1マナ+1マナ"の動きをそう簡単に許そうものなら、運悪くトリガーが埋まっていなかった場合、あっという間にゲームが終わってしまう。

 だからデュエマにおいて1マナのクリーチャーはそもそもアタックできないか、アタックできるにしても過剰なデメリットが付いているものがほとんどであり、そんな状態だから"1マナ→1マナ+1マナ"のデッキは組まれることが少ないのが通常となっているようなのである。

 "1マナ→1マナ+1マナ"を実現しようにも、まともな1マナ域が存在しない……それは"最速"を諦めるには十分すぎる理由に思われた。

 しかし。本当に無理なのだろうか?

 デュエマ16年の歴史によって積み上げられたカードプールはそんなにもスロウリィなのか?と、私の心の中のクーガー兄貴が語りかけてくる。

 そもそも、すべてのクソデッキは無理であり無謀なところから生まれてくるものなのである。ならば、デッキを組まずして諦める理由はないのではないか。

 そう思った私はまともな1マナクリーチャーが最も多そうだった火文明を選び、"1マナ→1マナ+1マナ"の動きを取り入れた"赤単速攻"をとりあえず組んでみることにしたのである。

初期型
枚数 カード名
  4 《凶戦士ブレイズ・クロー》
  4 《螺神兵ボロック》
  4 《ホップ・チュリス》
  4 《勇気の爪 コルナゴ
  4 《ステップ・チュリス》
  4 《紅風の盗賊 ビューラー》
  4 《一番隊 チュチュリス》
  4 《一撃奪取 トップギア
  4 《”BC”ヒット》
  4 《”破舞”チュリス》

 安定しない1マナ域。2マナが膨れ上がったガタガタのマナカーブ。トリガーを踏んだら即投了という脆弱さ。3拍子揃った見事なクソがそこにはあった。

 1マナ域が足りないからといって「ピコーン!2マナ域のマナコストを軽減すれば1マナじゃん!」と安易に考えるも、3回くらい一人回ししたところで「そんなわけねーだろ!」とカ〇ナベルの通販で買った《一撃奪取 トップギア》と《一番隊 チュチュリス》を壁に叩きつけている自分がいた。

 まず1つ目の問題は、《勇気の爪 コルナゴ》にあった。

 このカードは一見1マナ域に見えて1ターン目に出せないのでどこが勇気の爪なんだよ、1ターン目は先に他の1マナ域を出す必要がある。そうなると、このデッキには初手のカウントとしては実質12枚の1マナ域しか入っていないことになってしまうのだ。

 ましてそのうち4枚が返しの先手2ターン目に《異端流し オニカマス》や《奇石ミクセル/ジャミング・チャフ》を出されただけでお亡くなりになる《螺神兵ボロック》であることを加味すると、1マナ域の不足は顕著というほかなかった。

 加えて、それ以上に大きな2つ目の問題もまた、一人回しによって浮き彫りとなっていた。

 そもそも"1マナ→1マナ+1マナ"で展開し、3ターン目に《ステップ・チュリス》を走らせたとしても、5打点しか作れていないのである。

 デュエマは相手のシールドを割って追い詰めれば追い詰めるほど相手のリソースが増えて逆転の可能性が増えるゲームである。それゆえに相手を攻めきれない場合はあえてシールドを割らずにターンを返すのも定石の一つとなっているくらいなのだが、そこにおいて"3ターン目に5打点を与えつつ平穏無事にターンが返ってくることを祈って4キルを目指す"というのは、少なくとも逆に自分がトリガーなしのデッキを組んでいる以上、"最速"としては成立しているようで全く成立していないコンセプトと言わざるをえなかった。

 こうして2つの大きな課題にぶつかってしまった私は、カードリストの見直しを余儀なくされることとなった。

 これらの問題を解決しない限り、"赤単速攻"は"最速"のデッキとして成立していない。だが、ただでさえ速度の限界をコンセプトにしているのである。

 既に1マナのカードは穴が開くほど見直した。そしてその結果。

 解決策は、もはや見つからないように思われた。

■ 3. ゼロ

 だが、転機は意外にもすぐに訪れた。

 "赤単速攻"が行き詰ったことで、そろそろ他のデッキコンセプトにも手を付けてみるかと最新セットである双極篇1弾の中からデッキコンセプトになりそうなカードを探していたとき、"そのカード"に出会ったのである。

 そう、"1マナ"を超えるのはやはり"ゼロ"。とはいえ私もマナコストを軽減する"G・ゼロ"や"B・A・D"を持つカードの検索は当然していたのだが、実は双極篇1弾にはこれらの能力以外にも"ゼロ"が存在していたのだ。

 それではお見せしよう。これが私が到達した"最速"のビートダウンにしてデュエマでの初のクソデッキ、"赤単クレイジーバルチュリス"だ!

赤単クレイジーバルチュリス
枚数 カード名
  4 《凶戦士ブレイズ・クロー》
  4 《螺神兵ボロック》
  4 《ホップ・チュリス》
  4 《ブルース・ガー》
  4 《勇気の爪 コルナゴ
  4 《ステップ・チュリス》
  4 《紅風の盗賊 ビューラー》
  4 《”破舞”チュリス》
  4 《龍装者 バルチュリス》
  4 《スチーム・ハエタタキ》

 さっきとほとんど一緒じゃねーかと言われると返す言葉もないのだが、しかしこのデッキは実際、先ほど提示した2つの課題を見事にクリアしているのである。

 まず1つ目、1マナ域の不足の問題は《ブルース・ガー》を採用することで解決を試みた。

 こんな1回しか殴れないクソ鳥を"進化"も"革命チェンジ"もなしに採用するなんて気が狂っていると思われるかもしれないが、《勇気の爪 コルナゴ》を"1マナ→1マナ+1マナ"の後段部分にカウントするためには必要不可欠と言わざるをえない。加えて、2つ目の理由との兼ね合いもある。

 そして2つ目の3ターン目6打点の問題については、"ゼロ"こと《龍装者 バルチュリス》を発見したことで乗り越えることが可能となった。

 たとえば《ホップ・チュリス》→《ステップ・チュリス》+《龍装者 バルチュリス》と動けばその時点で3ターン目6打点が確定だし、2ターン目までが"1マナ→1マナ+1マナ"だとしても、3ターン目に2マナ速攻+《龍装者 バルチュリス》と動ければ同じく6打点を叩きだせるのだ。

 もちろんすべて先手かつトリガーや妨害がなければの話ではあるが、《龍装者 バルチュリス》はパワー4000と《閃光の守護者 ホーリー》よりもサイズが大きいので、継戦能力も一応向上している。

 さらに余ったスロットに適当に1マナ呪文である《スチーム・ハエタタキ》を搭載することで、相手の《ヤッタレマン》や《一番隊 バギン16号》《奇石ミクセル/ジャミング・チャフ》などを対処でき、3キルができなくても安定した4キルパターンを実現する。

 まさしく"最速"。デッキ1つ目にして早くもデュエマを終わらせてしまったかもしれない……そう思いながら私は一人回しで脳内の対戦相手を (当然トリガーなしで) 気持ちよくボコボコにし続けるのであった。

■ 4. 革命

 だが、そんな私と"赤単速攻"との蜜月は一瞬にして終わりを迎えることとなった。

青赤白バスター「では3ターン目に《”龍装”チュリス》を"B・A・D"で召喚、アタックするとき"革命チェンジ"で《蒼き団長 ドギラゴン剣》、マナゾーンから《勝利のアパッチ・ウララー》出します。手札を失礼して……赤なので《勝利のリュウセイ・カイザー》出します。《蒼き団長 ドギラゴン剣》で3枚ブレイク、続けて《勝利のリュウセイ・カイザー》で2枚ブレイク、《勝利のアパッチ・ウララー》でダイレクトアタック」

ジョーカーズ「《ジョジョジョ・ジョーカーズ》→《ヤッタレマン》から3ターン目に《ヤッタレマン》《パーリ騎士》、さらに2マナと3体戻しと2マナ軽減で《ジョット・ガン・ジョラゴン》召喚。攻撃時に1枚引いて《ガヨウ神》捨てます。"ジョラゴン・ビッグ1"で2ドローしてから《アイアン・マンハッタン》捨ててさらに2ドロー。"ジョラゴン・ビッグ1"でシールド3枚ブレイク、《ジョバート・デ・ルーノ》捨てて"ジョラゴン・ビッグ1"で《ジョット・ガン・ジョラゴン》をアンタップ。2枚ブレイク解決してからダイレクトアタック」

まつがんファッ????? (トリガーがないため一瞬で投了)」

 そう、デュエマの世界は修羅ばかりだったのである。

 要するに私は失念していたのだ。どうして《異端流し オニカマス》や《デスマッチ・ビートル》《洗脳センノー》、《奇石ミクセル/ジャミング・チャフ》といったカードが重宝されているのかを。"侵略""革命チェンジ"といったコンセプトは、既に3~4枚程度のコンボで容易に3ターンキルを可能にしてしまっているのだということを。

 こうなるとたとえ3キルが理論上可能だとしても、トリガーの有無で純粋な下位互換ということになってしまう。ならば《スチーム・ハエタタキ》を抜いてトリガーを入れる……?しかし4枚程度のトリガーでは焼け石に水だろう。

 とはいえ、1マナの除去である《スチーム・ハエタタキ》を超えるカードが存在するのか。

 立ちはだかる最後の課題。

 その答えはしかし、またしても"ゼロ"にあった。

赤単クレイジーバルチュリス (完成版)
枚数 カード名
  4 《凶戦士ブレイズ・クロー》
  4 《螺神兵ボロック》
  4 《ホップ・チュリス》
  4 《ブルース・ガー》
  4 《勇気の爪 コルナゴ
  4 《ステップ・チュリス》
  4 《紅風の盗賊 ビューラー》
  4 《”破舞”チュリス》
  4 《龍装者 バルチュリス》
  4 《ボルシャック・ドギラゴン》

 "革命0トリガー"

 赤単、しかもクリーチャー単だからこそ使える最強の切り返しカードが最後のキーパーツだった。

 《ボルシャック・ドギラゴン》。このカードならシールドに埋まらず直引きしたとしても3キルに対する切り返しが可能となる。1スロット4枚という最小限の備えで最大の防御を実現できるこれ以上ないカードと言えるだろう (ところで純粋な疑問だが、相手の場に水か光のクリーチャーがいるときに《螺神兵ボロック》がめくれたらどうなるのだろうか?)。

 《龍装者 バルチュリス》を"ゼロ・アタッカー"とするなら、《ボルシャック・ドギラゴン》はいわば"ゼロ・ブロッカー"。2つの"ゼロ"が、赤単速攻というアーキタイプを"最速"へと押し上げたのだ。

 かくしてデュエマの基本を学ぶデッキ「赤単クレイジーバルチュリス」は完成を見た。

 初見殺しであるデッキの性質上、さらにガチで勝率を上げたいなら"黒単デスザークか"ロージアダンテ"に見えるよう"超次元ゾーン"のカードをブラフで用意するべきなのかもしれないが、せっかく安めに組めるデッキなのでこのままなしにしておくとしよう。

 さてそれでは初回はこんなところで、また何か思いついたら更新するかもしないかもということで、また次回!