パイオニアというフォーマットができて以降、モダンの人気は少しずつ落ちてきている。
これまでは選択肢がなかったというだけで、実のところモダンに集まっていたプレイヤーたちはそれぞれ違う要素をモダンというフォーマットに求めていたのだろう。その要素をパイオニアがよりよく実現できるとなれば、モダンを離れるのは当たり前だ。
だが、おそらく問題はそれだけではない。大型のイベントがないことはもちろん、『エルドレインの王権』以降のモダン環境が停滞しているように見えることも、プレイヤーのモダン離れを加速している要因の一つと言えるだろうからだ。
では、その停滞の原因はどこにあるのか?
一つは間違いなく《王冠泥棒、オーコ》にある。このカードが睨みを利かせる範囲があまりにも広いことで、マナブーストあるいはインタラクションを挟んでから着地させるというアクションが、モダン広しといえど土地系以外のデッキに対してあまりにも制圧力の高いものとなってしまっているのである。
そしてこの《王冠泥棒、オーコ》と組み合わさり、目立たないけれどもしかし確実に悪さをしているカードが《アーカムの天測儀》だ。
一切のハンドロスなしに色事故をすべて解消し、《オパールのモックス》の金属術を助け、《最高工匠卿、ウルザ》のトークンのサイズを上げつつ能力起動に貢献できるという点において、ウルザコントロールという今最も忌み嫌われている存在を生み出した元凶と言えるだろう。
では今のモダンで禁止に一番近いカードをあげるとしたら、《アーカムの天測儀》ということになってしまうのだろうか?
私の答えはノーだ。
思うに、現在モダンの環境を圧迫しているのは「多指向性制圧力」である。
モダンのカードプールは本来、3~5キルが可能であればありとあらゆる角度のデッキを許容する度量がある。それが許容されなくなってしまっているのは、そういった様々な角度を持つデッキたちのうちの8割以上に対する有効な返し手を、トップメタのデッキが持ってしまっているからだ。
土地コンボがそうであることは別に構わない。サイドから《減衰球》や《血染めの月》などでいじめられる運命にあるからだ。
だがフェアなコントロールがそれを有しているのは正直不健全である。それもジャンドのようにハンデスしかないのであれば問題ないのだが、《否定の力》というちゃぶ台返し返しまで有しているコントロールである。
そしてこの力をウルザコントロールやバント氷雪コントロールなどが有している理由は、《アーカムの天測儀》が直接の原因ではなく、偏に《王冠泥棒、オーコ》がその原因であろう。
ならば結論は簡単だ。禁止するべきは《王冠泥棒、オーコ》なのだ。
Q.《アーカムの天測儀》はモダンで禁止されるべきなのか?
A.ノー。少なくとも先に《王冠泥棒、オーコ》を禁止にするべきである。
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Today's Tune
理芽「ユーエンミー」