だらだらブログ

なんかゴミです。

【だら草006】なぜ1ターン目に《思考囲い》を打たないのか?

 

 

 本日話題になっていた一題である。といっても投票結果が示す通り、選択そのものは多くのプレイヤーにとって自明であり、どちらがより勝率を高めることができるかといういわゆる「正解」なるものがあるとしても、おそらく実際に1マナクロックを設置する方に軍配が上がるであろう。

 では、なぜそのように判断できるのか。

 マジックにおけるプレイの判断は数学ではない。複数の要素があり、それらの重みづけをして比較検討した結果、結論が導き出される。そう考えたとき、このシチュエーションにおける判断の要素とは何か。

 これについて一つ重要な視点があるとすれば、それはカードの「効用」である。1マナクロックの効用は、クロックの効用とはそれすなわち打点であるわけだけれども、それをデッキに入れるという判断をしている以上は、言うまでもなく1ターン目に出したときにこそ最大化される。それがたとえ1ターン目と2ターン目で打点が1点しか変わらない《漆黒軍の騎士》であったとしても、1点という値が明確に変わってしまう以上は、結論はやはり同様である。

 対して、《思考囲い》の効用はどうだろうか?思うにこの問題が経験則的にではなく、明確な理由を言語化して判断するのに難しい理由は、《思考囲い》は「いつ打っても何でも落とせるけれどもどこかのタイミングで消費期限があり、それを過ぎると効用が一気にゼロに近づく」という特殊な効用曲線を持つために、どのタイミングで効用が最大化されるのかが判断しづらい、という点にあるように思う。

 では《思考囲い》の効用を最大化することについて考えてみよう。そもそも《思考囲い》の効用とは何か。好きなカードを落とせる以上は、神の視点でゲーム開始から終了までを振り返った場合に「こちら側の勝利を最も妨害するカードを抜くこと」が理想である。だが人は神ではないため、非公開情報については推測して考えるほかない。すなわち現実的には、「自分のゲームプランに対する最大脅威となると思われるカードの排除」ということになる。

 そうなると、「最大脅威と思われるカードの排除という結果を実現するためには、はたしていつ《思考囲い》を打つのが適切なのか?」という問題が立ちはだかってくる。

 そしてそう言われると、この問題について判断するためには入力しなければならない変数が一つあることに気づくだろう。それは言うまでもなく (定義の問題ではなく、プレイしているそのゲームにおける) 「最大脅威とは何か?」だ。

 ここにおいて、冒頭の問題が「パイオニア」とフォーマットを指定していることに重要な意味が出てくる。すなわち、モダンやレガシーにおいてこちら側の勝利を妨害してくる最大脅威は、最速で1ターン目に唱えられてしまったり (e.g.《踏査》《暗黒の儀式》《霊気の薬瓶》などを想起されたし)、そもそも《渦まく知識》を構えられると最大脅威の排除という結果そのものが実現できなくなってしまったりすることが往々にしてあるからだ。

 だが、ひとまず現在議論しているフォーマットはパイオニアである。

 パイオニアにおいて最大脅威となりうるカードは、少なくとも現状では1マナ圏にはかなり少ない。最も強い1マナアクションは (《思考囲い》そのものを除けば) 《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》などのマナクリーチャーだろうが、仮に冒頭の手札に《致命的な一押し》がなかったとしても、「どうしても《ラノワールのエルフ》や《エルフの神秘家》を出してもらっては困る」というほどのことはないはずだ。なぜなら、続く3マナアクションの最大値を《思考囲い》することによって大抵は事足りるからである。

 むしろ、パイオニアがここ数年のスタンダード環境を煮詰めたフォーマットであるという性質上、3マナのアクションには一度唱えられると取り返しが付かなくなってしまうカードが多いことは容易に想像できるはずだ (e.g.《ニッサの巡礼》《鉄葉のチャンピオン》《呪文捕らえ》《ゴブリンの鎖回し》《ゴブリンの熟練扇動者》《傲慢な血王、ソリン》《ジェスカイの隆盛》etc...)。そしてまた、自分のデッキに《致命的な一押し》がある関係上 (手札に持っているからではなく、デッキに入れて使っているという時点で) 、3マナのクリーチャーに対してこそ最もテンポが取りづらいという事情もある。

 したがってパイオニアにおける黒単アグロにとっての最大脅威とは、平均的には3マナのアクションであるということが推察される。

 だとしても、「1ターン目に撃った方が、1マナが最大脅威になる展開と3マナが最大脅威になる展開を両取りできるのではないか?」という反論もありうるところである。

 確かにフィールドのたとえば半数以上が緑単ガルタだったならそのような考え方もありうるだろうが、まず現在のパイオニア環境において《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》を採用しているデッキはせいぜい20%もいけばいい方であろう。

 そしてまた、《思考囲い》によって最大脅威を排除できたとしても、後引きで引き直されたら意味がないという点もある。

 ここにおいて、当初用いた《思考囲い》の効用の定義が正確ではなかったことがわかるわけだが、ここで実現したいのは「最大脅威の排除」という行動そのものではなく、「最大脅威の排除」という結果である。である以上、最大脅威を相手の手札からぶち抜くのは後引きの可能性が最も少ないタイミングであることが望ましい。すなわち、3マナのアクションをぶち抜きたいならその1ターン手前で《思考囲い》を撃った方が良いということだ。これは先手なら3ターン目、後手なら2ターン目ということである。

 もちろんマナカーブの都合上それができないことは起こりうる (たとえば3マナが最大脅威だとしても、手札に2マナと3マナのクロックがあるなら1ターン目に《思考囲い》を撃つしかない) 。また相手の行動やセットランドによっては、「平均的」と曖昧に濁しておいた情報がそれによって確定したわけだから、適宜判断を修正する必要はある。たとえば後手1ターン目に《ラノワールのエルフ》を出されたら、返しで《思考囲い》を撃たないと3マナのアクションをされてしまうので、2ターン目にプレイするという選択肢が現実味を帯びてくる。他方で1ターン目に《神聖なる泉》を置かれたら、青白コン相手なら3マナで特に強いアクションもないので、《至高の評決》を撃たれた返しででも撃てばいいや、ということにもなりうる。

 しかしそれは特殊な事例だったり2ターン目以降に行動を分岐させればいいというだけの話であって、冒頭のシチュエーションにおいて1ターン目に《思考囲い》を撃つべき理由にはやはりならないのだ。

 《思考囲い》というカードは、大抵の場合起こりうるゲームの分岐を最大限曲げることができる万能のカードである。

 そしてそれゆえに、判断に負荷をかけるカードであるという側面は否定できない。なるべく早く《思考囲い》をプレイして未来を確定させ、レールに乗りたいと考えるのも理解できる心情である。

 しかし勝利を掴むという観点で見るならば、どれだけ精神に負担がかかったとしても、《思考囲い》がぶち抜くのは「最大脅威」でなければならない。そして「最大脅威」を抜くためには、まず自分のデッキにとってそれが何なのかを見極め、その上でそのカードのマナ域に沿った適切なタイミングで唱えることこそが最も肝要なのだ。

Q.なぜ1ターン目に《思考囲い》を打たないのか?

A.1マナクロックの効用は1ターン目に最大化されるのに対し、《思考囲い》の効用はパイオニア環境ではほとんどの場合1ターン目に最大化されないから。

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