デッキを作っていると、まるで迷路を彷徨っているかのような感覚に囚われることがある。
右と左、どちらに進めば道は開けるのか。一度通った場所に戻ってきてはいないか。進む先はそもそも行き止まりではないのか……。
永劫に続くとも知れない放浪に疲れ果て、何もかも投げ出してしまいそうにもなる。
だがもし、迷路を抜ける方法さえ知っているならば。いかなる広大な迷宮に投げ出されたとしても恐れを感じることはないはずなのである。
だからデッキ構築においても、まずもって必要なのはその方法。すなわち。
自らの位置を正確に知ることこそが、デッキ構築の迷路を抜け出すために何よりも重要なのだ。
■ 1. 迷路
大分間が空いてしまったが、前回の「赤単クレイジーバルチュリス」ではとにかくまずはデュエルマスターズ (デュエマ) の"基本"を押さえることに終始した。
となれば、次は"応用"へと進まなければならない。1マナのクリーチャーをかき集めることなど実のところ誰にでもできる。そう、ここから先は私自身の個性を十二分に発揮した形でのデュエマでのデッキ作りが求められるのだ。
だが一口に"応用"といっても、一体どんなデッキを作ればいいのだろうか?
……と、問いの形にしてはみたものの、実のところ私には既にその答えが見えていた。
ストレートにシールドを割るビートダウンを作り終えた以上、次に作るべきはその真逆。
シールドを割らずに勝つ……すなわち、コンボデッキを製作する時が来たのだ。
そしてその相棒も、双極篇1弾が発売したときから既に心に決めていた。
《超運命 アミダナスカ》。
ユーザーの投稿をベースにした"スペシャルズ"として産み落とされたこのカードは、シールドゾーンにカードが置かれることをトリガーとして山札の一番上のカードを (コストの制約はあるものの) 唱えられるという、まさしく無限大の可能性を秘めた能力を持っている。
何せ山札の一番上のカードが「シールドゾーンにカードを置くこと」を能力とするカードであり続ける限り、延々とカードのプレイを連鎖し続けることができるということになるからだ。
とはいえ冷静に考えると、連鎖が続いてたとえシールドが10枚とか15枚になったとしても、それだけでゲームに勝つことはできない。むしろ山札がなくなったら即負けのデュエマにおいては、闇雲にシールドを増やし続けることは自殺行為ともなりうる。
つまり。《超運命 アミダナスカ》をうまく使うには、別途勝ち手段が必要なのだ。
そしてデュエマには都合よく、シールドを勝ち手段にすることができるカードが存在していた。
《光霊姫アレフティナ》。
このカードならば、相手のシールドを一切割ることなく勝利することができる。何せシールド10枚という条件は、ひとたび《超運命 アミダナスカ》からの連鎖が始まろうものなら、達成はそう難しくないはずだからだ。
かくして「《超運命 アミダナスカ》でシールドを増やし、《光霊姫アレフティナ》で勝つ」というコンセプトを見定めた私は、早速デッキの製作に着手した。
これが終わりなき迷路の始まりであるとも知らずに……。
コンボデッキを作るときは、まず始めに"原型"を作る必要がある。
"原型"はあくまで出発点であり、完璧である必要はない。要は「コンボの達成のためには何が必要なのか」を知るために、もっと言えば理論と実際との間にある齟齬を具体的に知るために、ひとまず「デッキの形をした何か」が必要ということだ。
さて、今回私が作り上げた原型は、大体以下のようなものだった。
アレフティナナスカ (原型) | |
---|---|
枚数 | カード名 |
4 | 《奇石ミクセル/ジャミング・チャフ》 |
4 | 《セツナノ裁徒》 |
1 | 《光牙忍ハヤブサマル》 |
4 | 《奇石 クローツ》 |
3 | 《光霊姫アレフティナ》 |
4 | 《戦の傾き 護法》 |
2 | 《陰陽の果て 白夜》 |
4 | 《超運命 アミダナスカ》 |
2 | 《天空城の防壁》 |
4 | 《命翼ノ裁キ》 |
4 | 《フェザン・ルーラー》 |
4 | 《ジャスティ・ルミナリエ》 |
いきなり語彙が貧弱になって申し訳ないのだが、このデッキははっきり言って「デッキの形をしたう〇こ (直球)」である。
だが、それも仕方のない話かもしれない。何せ「《超運命 アミダナスカ》でシールドを増やし、《光霊姫アレフティナ》で勝つ」というコンセプトは、それくらい「完成形が見えない」ものだったからだ。
それでも、"原型"を一人回ししていけばいつかは"完成形"にたどり着くはずなのである。とはいえ、「とりあえず手元にある『シールドを増やす』系のカードを適当に入れておけばそれっぽくなるだろう」と高をくくっていた私は、一人回しを始めて即座に後悔することとなった。
「《超運命 アミダナスカ》でシールドを増やし、《光霊姫アレフティナ》で勝つ」ためには、あまりにも多くの"条件"を乗り越える必要があったのだ。
■ 2. 条件
"原型"を一人回ししてわかったこと。それは、「《超運命 アミダナスカ》で勝つためには、越えるべき4つのハードルがある」ということだった。
まず第一に、《超運命 アミダナスカ》を出したとしても、山札の上がメタリカでも呪文でもないカードであっては意味がなく、したがってそういった事態を招きかねない"ハズレ"のカードはデッキに入れられない、という制約があることがわかった。
《光霊姫アレフティナ》があるので最低1枚は"ハズレ"ができてしまうとはいえ、《光牙忍ハヤブサマル》などにスロットを割いてしまっては、連鎖が止まる確率が高まってしまう。また、「シールドゾーンにカードを置かないメタリカや呪文」も"ハズレ"ではないものの連鎖が止まってしまうため、《奇石ミクセル/ジャミング・チャフ》ですらなるべくデッキに入れたくないということも判明した。
そして第二に、《光霊姫アレフティナ》という"ハズレ"が最低1枚デッキに入ってしまう以上、仮に"ハズレ"をめくったとしてもリカバリーできる手段が必要となることもわかった。
さらに第三に、"原型"では《光霊姫アレフティナ》を出す手段として《ジャスティ・ルミナリエ》を採用していたが、《ジャスティ・ルミナリエ》がめくれたときに都合よく《光霊姫アレフティナ》が手札にあるとも限らず、《光霊姫アレフティナ》の後引きにも対応できる手段が必要という課題も発覚した。
加えて第四に、《超運命 アミダナスカ》は4枚入っているとはいえ6ターン目に必ず手札にあるとも限らず、《超運命 アミダナスカ》を引き込む手段も必要という結論が出ていた。
もちろん第二~第四の要請を満たすカードは"ハズレ"であってはならない。
……無理ゲーか?
あまりにも厳しい条件に、心が折れそうになる。
だが、これまでマジックで組み上げてきたデッキたちも一見無謀とも思える条件をクリアして誕生しているのだ、ということを思い返した私は、半ば諦めつつも条件に合ったカードの検索を続けることにした。
簡単に組めるデッキならば、私ではない誰かがたどり着くだろう。私が組みたいのは、私でなければたどり着けない境地なのだ。
そう、だから。
信じろ。デュエマの可能性を。
条件に合うカードは、16年にも及ぶデュエマの歴史の中にきっと存在する。
そうして、「シールド」「出してもよい」「加えてもよい」……思いつく限りの検索条件でカードを探した私は、ついに。
"それらのカード"との邂逅を果たしたのである。
《星の導き 翔天》、そして《シンクロ・シールド》。
この2枚こそが、条件をくぐり抜けるための鍵だった。
《星の導き 翔天》はタップしていれば《光霊姫アレフティナ》を出せるので、《超運命 アミダナスカ》でめくれたとしても先出しが可能な点が《ジャスティ・ルミナリエ》よりも優れている。"NEO進化"もあるのでタップしているクリーチャーに重ねても良し、最悪相手のシールドに殴ってタップすることもできる。
さらに《シンクロ・シールド》は仮に《超運命 アミダナスカ》で"ハズレ"がめくれてもそこから0マナで連鎖を再スタートできるスーパーカードであり、しかも《星の導き 翔天》を能動的にタップできるオプションもある。
これらのカードによって第二、第三の条件はひとまず達成できたと言えるだろう。
加えて《龍装者 バーナイン》と《奇石マクーロ》の発見は、「《超運命 アミダナスカ》を引けない問題」をかなり緩和することに成功した。
とりわけ《龍装者 バーナイン》はシールドを置くことはできないので直接的には連鎖を止める要因となりうるものの、代わりにドロー効果で《超運命 アミダナスカ》の連鎖時における"ハズレ"をケアしてくれるので、準コンボパーツと言っていいほどにコンボの成功率を高めてくれる。
あとは《シンクロ・シールド》の種が必要なことと《龍装者 バーナイン》絡みのぶん回りを見据えて《一番隊 クリスタ》でも適当に突っ込んでおけばいいだろう。
かくして一見達成不可能にも思える条件を乗り越え、メタリカベースの《超運命 アミダナスカ》デッキができあがったのだ。
アレフティナナスカ (初期型) | |
---|---|
枚数 | カード名 |
4 | 《一番隊 クリスタ》 |
4 | 《奇石マクーロ》 |
4 | 《セツナノ裁徒》 |
4 | 《奇石 クローツ》 |
4 | 《龍装者 バーナイン》 |
3 | 《光霊姫アレフティナ》 |
4 | 《超運命 アミダナスカ》 |
4 | 《星の導き 翔天》 |
4 | 《シンクロ・シールド》 |
1 | 《ジャスティ・ルミナリエ》 |
4 | 《エメスレム・ルミナリエ》 |
《光霊姫アレフティナ》を後出しできる《星の導き 翔天》。連鎖が止まったとしても再スタートを可能にする《シンクロ・シールド》。手札を補充しつつ連鎖をサポートする《龍装者 バーナイン》……。
全ての条件を乗り越えた《超運命 アミダナスカ》は最強。けだし完璧。そう思われた。
何せ理論的にはすべての課題を解決しているのだ。
だが。このデッキの顛末については読者諸君も既にご存知かもしれない。先日のグランプリ-6thのサイドイベントに出場した私は、バスターとバイクに成すすべなく轢き殺されてしまったのだ。
それは実際に対人戦をやってみることで初めて発覚した残酷な真実だった。
どんなに立派な迷路を作っても、バイクで全速力で突っ込んでこられると人は死ぬのである。
■ 3. 進化
浮上した新たな問題。それは速度のないコンボデッキにありがちな「防御力不足」であった。
つまり、必要なのは「シールド・トリガー」なのである。脳がチンパンなのですぐに「イケるでしょ」とノートリのデッキを組んでしまいがちだが、どんなゴミクリーチャーにも6回殴られたら死んでしまう紙防御のデュエマなのだから、冷静に当たり前の話だ。
しかしネックは、《超運命 アミダナスカ》の連鎖を止めないためには、「シールド・トリガー」もまたシールドゾーンにカードを置くカードでなければならず、それでいて「シールド・トリガー」として相手のクリーチャーの攻撃をしっかりと押しとどめる効果をもっていなければならない、という点にある。
シールドゾーンにカードを置きながらもトリガーとして高性能。そんな便利なカードが……?
あった。《スローリー・チェーン》だ。
このカードならトリガーとして発動すればそのターンの攻撃はすべて止められる上に、《超運命 アミダナスカ》からめくれたとしても連鎖が止まることはない。
実のところこのデッキは序盤に出てきた2コスクリーチャーに気まぐれにシールドを1枚割られるだけでも連鎖の成功率が格段に下がって悶絶モノのクソコンボなので、いざ殴られたときにシールド枚数の被害を最小限に抑えられるこのカードは、盾からキーカードが落ちるリスクを踏まえても最高の防御札と言って差し支えなかった。
そして……ここまで読んだ方々の中にはとある1枚のカードが全く話題にあがらないのを不思議に思う人もいるだろう。
そう、それは《超運命 アミダナスカ》の登場とともに一躍脚光を浴びたカード。
《ヴァリアブル・ポーカー》だ。
実のところ私自身もこのカードの存在には気づいてはいたのだが、動画などで先に取り上げられてしまったため、「他の人が見つけたカードなら自分で使わなくてもいいか」と思ったのと、そもそも《超運命 アミダナスカ》を探す動きに貢献しないため脳内で「弱そうだな」と思ったので、あえて試そうとはしなかったという経緯があった。
だが、メタリカ型が行き詰まり、もしかしてこのカードならばこれまでこのデッキが乗り越えられていなかった構造上の欠陥を解消できるかもしれないと考えたとき……煩悶の末に、私は《ヴァリアブル・ポーカー》を試してみることを決断したのである。
なぜなら真なるデッキの完成形を目指すという目標の前では、「なるべくオリジナルな完成形を作りたい」という私のちっぽけなプライドなどゴミクズにも等しいものだからだ。
そうして《ヴァリアブル・ポーカー》入りの《超運命 アミダナスカ》デッキを試した結果……はたして、デッキは大幅な進化を遂げることとなった。
そう、ついに私は長きにわたる《超運命 アミダナスカ》の迷路を抜け出すことに成功したのだ。
■ 4. 完成
これまでこのデッキが乗り越えられていなかった構造上の欠陥……それは盾落ちだった。
ゲーム開始時に山札から5枚がシールドに強制的に置かれてしまうデュエマにおいては、コンボデッキは常にキーパーツがシールドに埋まってしまうリスクを負う宿命にある。
もちろんそれだけならどのデッキも同じ条件だが、勝つのにシールドを自ら10枚まで増やす必要がある《超運命 アミダナスカ》のデッキを使う場合に限っては、盾落ちはリスクどころかむしろ通常営業と言わざるをえない。
となればキーパーツの2枚差しなどは許されず、最低3枚、できれば4枚積むべきという話になる。ところが《光霊姫アレフティナ》の場合、積めば積むほど今度は連鎖が止まるリスクが高まってしまうのである。
このジレンマを解消することがどうしてもできなかった結果、初期型では上記のように3枚積みにして「まあ最悪盾落ちしてたら殴ればいいか」と雑に考えていたのだが……もし《ヴァリアブル・ポーカー》を積むなら、ボトムに固まる場合などもあるから確定ではないにせよ盾からキーパーツを救い出せるので、《光霊姫アレフティナ》は最低枚数の1枚でも十分ということになるのだ。
加えて《超運命 アミダナスカ》の連鎖自体は途中で止まる可能性も高いところ、ひとたび《ヴァリアブル・ポーカー》をめくれば連鎖が止まる心配がおおよそなくなるのも心強かった。
そう……これにより、今度こそすべての課題を突破した最強の《超運命 アミダナスカ》デッキが爆誕したのだ。
それではお見せしよう、これが完成版の「翔天アレフティナナスカ」だ!
翔天アレフティナナスカ | |
---|---|
枚数 | カード名 |
4 | 《一番隊 クリスタ》 |
2 | 《奇石ミクセル/ジャミング・チャフ》 |
4 | 《奇石マクーロ》 |
2 | 《セツナノ裁徒》 |
1 | 《リンネノ裁徒》 |
2 | 《奇石 クローツ》 |
4 | 《龍装者 バーナイン》 |
1 | 《光霊姫アレフティナ》 |
4 | 《超運命 アミダナスカ》 |
2 | 《星の導き 翔天》 |
4 | 《ヴァリアブル・ポーカー》 |
4 | 《スローリー・チェーン》 |
4 | 《シンクロ・シールド》 |
2 | 《エメスレム・ルミナリエ》 |
☆☆☆夏休みこども相談室のコーナー☆☆☆
Q1. このデッキはバイクにかてますか?
A1. 勝てません。《熱き侵略 レッドゾーンZ》によってシールドが燃える上に《轟く侵略 レッドゾーン》でトリプルブレイクされると、《スローリー・チェーン》とあまり関係なくシールド枚数が足りなくて死にます。
Q2. このデッキはバスターにかてますか?
A2. 勝てません。トリプルブレイクと同時に対戦相手の心の臓が止まらない限り不可能です。
仕方ない。6マナのクリーチャーを素出ししてそのまま勝とうというのがそもそも発想として間違っていた。《超運命 アミダナスカ》にも限界はあるということだ。
だが死ぬほど回したおかげで一人回しの楽しさは折り紙付きなので、デュエマはやりたいけど人と会話はしたくないという方はぜひこのデッキを使って自分の殻に引きこもってみて欲しい。
と、ここまで書いてきて気づいたのだが……
そういえばこのデッキ、《デスマッチ・ビートル》出されたらどうするんだろうか?
……。
…………。
🤔🤔🤔🤔🤔?????
(0614追記 オニカマスとセンノーは召喚なのですり抜けられるということで修正しました)
……どうやらこの迷路には終わりがなさそうなので、6月23日(土)発売の「双極篇 拡張パック第2弾 逆襲のギャラクシー 卍・獄・殺!!」の頭のおかしい新カードである《"轟轟轟"ブランド》と《グレイト"S-駆"》を「赤単クレイジーバルチュリス」に入れ込む作業に戻ることにする。
それではまた次回!