Modern Challenge Stupid Grishoal
— Atsushi Ito (@matsugan) February 15, 2020
R1 Eldrazi Tron WLL
R2 RG Land Destruction WLW
R3 Urza Control WW
R4 Burn WLW
R5 Eldrazi Tron LWW
R6 Mono Red Prowess LWW
R7 Amulet Titan WLL
R7G3は論争をかわせず負け。適正なサイド枚数が難しい。青パクトに加えて帳2枚くらいは入れるべきだったか。 pic.twitter.com/0kUQnJk4FU
前回の記事では、ネオブランドに《むかしむかし》が入らない理由について「リターンが小さい上にリスクが大きすぎるから。」という答えを出した。
だがそれからしばらくこのデッキを回していて、現在のレシピでは上で載せたように《むかしむかし》を1枚だけ採用するようになったことで、「あの説明は (間違ってはいないが) 不正確だったな」と思い直したので、この続編をしたためることにしたわけである。
さて、一体何が不正確だったのか?
デッキにあるカードが採用されるか否かは、そのデッキがそのカードが入るべきスロットに対して持っている「要請」の内容で決まる。
たとえばバーンデッキが《稲妻》以外の56枚のスロットが埋まっている状態で「残り4枚のスロットに何を入れるか?」という問いを立てられたら、「なるべく軽く、ダメージ効率が良い火力」という「要請」が立ち上がるので、《稲妻》が採用に至る、というプロセスを踏む。
ネオブランドの場合、上のレシピで言うと4枚の《血清の幻視》、1枚の《秋の際》、1枚の《通りの悪霊》、2枚の《夏の帳》、1枚の《むかしむかし》の合計9枚のスロットを除いた51枚はコンセプト上自明なものとして採用されているので、それら9枚に対してどのような「要請」が働いているのかを言語化することによって、9枚の内容を定めることができる。
では、この9枚のスロットにはどのような「要請」が働いているのだろうか?
ネオブランドの勝利条件は「《アロサウルス乗り》+《新生化》系スペル+緑のカード2枚+十分な土地」という組み合わせを手札に揃えることである。そしてロンドンマリガンの導入以降、このうち「《アロサウルス乗り》(8枚)+《新生化》系スペル(8枚)」というセットについては、揃った手札をダブルマリガンまで追い求めるのがこのデッキにおけるマリガン基準として通常となった。
なぜなら、残る条件である「緑のカード2枚(36枚)+十分な土地(13枚+4枚)」はこのデッキにおいては他の要素よりデッキ内の枚数が多いので、キープ後のランダムなドロー内容でもより高い期待値で引き込めるからだ。すなわち、最も多くのカードを見ることができるマリガンの段階で、最も引き込みにくい2つの要素を手札に入れておくことがまずもって優先命題となってくる。
となると、この9枚のスロットには「《アロサウルス乗り》(8枚)+《新生化》系スペル(8枚)」のいずれかの代替となること、という要請が働いていると考えるべきだろう。なぜなら、ダブルマリガンまでしてもこのうちの片方の要素しか手札に入らなかった場合、もう片方の要素を何とかして引きこむ必要があるからだ。
そう考えたとき、《むかしむかし》がこの条件に該当しないことは明らかである。《むかしむかし》は《アロサウルス乗り》は見つけることができても、《新生化》系スペルを探し当てることができない。
ただし、ここからは個別具体的な衡量が実は働いていることに注意しなければならない。まず《血清の幻視》はこのどちらにもアクセスが可能だが、緑のカードではないという欠点がある。しかしその欠点よりも「両方に (一定以上の確率で) アクセス可能」という利点が優先されるため、9枚のうち4枚のスロットは《血清の幻視》にまず最優先に割り振られる。
しかし、ならば《手練》や《選択》にも採用の可能性があるのでは?という話になるのだが、ここでは1. それらによってどちらかにたどり着く確率は必ずしも信頼できない 2. 緑のカードではない 3.《血清の幻視》の上から採用すると、後手番の際に使いきれない可能性がある……という欠点が勝り、それならば「サイクリング」で後に引けなくなるリスクはあるものの緑のカードでかつドローにマナがかからない《秋の際》と、同様にライフのリスクはあるものの同じくドローにマナがかからない《通りの悪霊》が1枚ずつ採用される、という判断になる。なお、これらの2枚にはステージ2でも追加の1ドローにできる、という追加の加点要素もある。
そして残る3枚のスロットを考えたとき、どの道《選択》や《手練》を入れる選択肢がない以上、次点の要素である「緑のカード2枚+十分な土地」の収集度合いに関してフレキシブルに対応できる《むかしむかし》を3枚入れるという判断もありうるところ、1.《むかしむかし》は2枚目以降の価値が著しく減衰する 2.サイドボードのスロットが微妙に足りていない……という2点により、手札に来たときには最大効率が得られる「1枚目の《むかしむかし》」にのみスロットを割り振って、残る2枚は一応対カウンターの機能がありつつ最低限緑のカードでもある、サイドから溢れた《夏の帳》に割り振ろう……という思考の順序となったわけである。
すなわち前回の記事が不正確だったのは、実際には他のカードが持つ「要請」の充足度との相対比較によってカードチョイスを決定しているにもかかわらず、《むかしむかし》の「要請」の充足度が絶対的に不足していることが不採用の理由であるかのように語ってしまった点にある。すなわち《むかしむかし》はネオブランドの「要請」を全く満たさないというわけではなく、比較検討した結果、《むかしむかし》が持っている機能はネオブランドの勝利条件の達成という目的に対して他のカードよりも寄与しないと判断したから採用していないのだ。
あえて言うならばこの《夏の帳》2枚のところだけは《造反者の解放》と散らしてもいいと考えているが、ともあれ結論として、《むかしむかし》の優先度が低いのは正確には、「《アロサウルス乗り》(8枚)+《新生化》系スペル(8枚)」というキープ基準にほとんどアクセスできないため、このスロットに求められる「要請」を他のカードよりも満たさないから、と言うべきである。
Q.続・なぜネオブランドに《むかしむかし》が入らないのか?
A.「《アロサウルス乗り》と《新生化》系スペルの両方にアクセスできる」という最重要の「要請」を満たさず、他のカードの効果と比較した結果優先度が低いから。
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空白ごっこ「リルビィ」